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2010年2月アーカイブ

Vol.7  私の役割

 

「経営の経験がありますが、事業計画はきちんと立てるべきだと思います」

「規模から考えて、資金が少なすぎると感じます」

「このまま進めても失敗すると思います」

これらは、このブログを読んで、私に送られた「ぷかぷか」の事業に対する感想やご意見の一部だ。

 

経営の経験がある方や、福祉起業について知識のある方が送ってくださったもので、「ぷかぷか」について率直に意見を寄せてくださったものだと感じている。

 

ブログを更新するたびに、「ちゃんと伝わる内容だったかなぁ・・・」と迷いながら書き続けているが、記事に目を通してご意見を寄せてくださる方には、本当に感謝の気持ちでいっぱいになる。

 

私自身は、「ぷかぷか」の事業に資金を出していないし、スタッフとして関わっているわけでもない。当事者ではなく、取材者で、「ぷかぷか」ができあがっていく道のりを記録している人間だ。

 

しかし、まったくの他人というわけでもない。

一般の人より、「ぷかぷか」に近い距離にいると思う。

高崎さんや「ぷかぷか」で働く予定のスタッフさんなどと顔見知りになり、親しくなればなるほど、「ぷかぷか」の事業に対して「成功してほしい」という思いが強くなる。

 

一方で、冷静な目を持って、この取り組みを記録していこうとする気持ちもある。冒頭で紹介した感想や意見は、私自身に、少し距離を置いて「ぷかぷか」を眺める視点を与えてくれるものになっている。

 

私自身は、経営や事業について、それほど深い知識はない。

ただ、会社員として十数年働いてきた経験を踏まえて、経営や事業展開について考えるとき、「ぷかぷかは、これで大丈夫だろうか?」と不安を感じる点はたくさんある。

 

これだけの住人がいる。これだけの保育園や施設などがある。だから、お店ではこれくらい売れるだろう・・・。注文を受けて配達するのでこれくらいのパンは売れるだろう・・・。

 

販売計画を見ながら想像をしてみるが、いまひとつ、「これくらい売れる」という数字に拠り所を感じることができない。

 

毎日、お店で一定数のパンを作り、販売できる体制なのだろうか?

誰が、何を、どのように担当してパンをつくりあげていくのだろう?

外販を受けるというけれど、注文が少なければ、少しだけのパンを車で届けにいくことは、利益に見合わないかもしれない。採算が取れる注文数はあるだろうか?

 

細かいことを考えていくとキリがない。

そこで「綿密に予測や計画を立ててみても、蓋を開けてみなければ結局分からない」と考えてみたりもする。しかし、私宛てに頂いたメールを読むと、「やはり、事業計画は甘いのかもしれない」とも感じる。「ぷかぷか」を「ひいき目」で見ている自分に気がつく。

 

「私の役割」を改めて問い直すと、やはり、「ぷかぷか」をしっかり見つめていくことだと思う。

「ぷかぷか」に携わる人びとや、パンを製造販売するうえで生じる課題、資金や収益の問題、事業展開の紆余曲折も含めて、しっかり見つづけていくことだろう。

 

  知的障害者が働くカフェ&ベーカリー「ぷかぷか」のホームページには、これから出来るお店をイメージして描かれた画が掲載されている。このイメージ画を見ていると、温かみのある、楽しいパン屋さんが浮かんでくる。実際にどのようなお店が完成するのか、期待も高まる。

 

「ぷかぷか」のイメージ画を描き、お店の設計や業者の選定、内装などを手がけるのは、「木の仕事」のメンバーだ。霧が丘グリーンタウンから少し離れた、環状4号線沿い、霧が丘西側に「木の仕事」(横浜市緑区長津田町)のお店と工房はある。

「木の仕事」は、住宅のリフォームや、部屋にあったオーダーメイドの家具づくりなど、木に関わる仕事全般を引き受けているグループで、メンバーは、小林大輔さん、石塚浩之さん、比留間友樹さん、平沢尚弘さんの4人だ。

 

 「木の仕事」のお店には、手作りの木の家具が並ぶ。椅子や机、テーブルなど、素人が見ても、素材の自然な美しさを生かしてつくられていることがわかるだろう。

 

 座り心地が良いように、お尻が触れる部分にゆるやかな窪みがつくられている椅子。

「手紙を書くために使ってほしい」と作られた「ふみ机」には、和紙や花柄の入った綺麗な便箋や封筒をしまっておきたくなるような引き出しがついている。

 遊び心が溢れる商品もある。例えば、「野の花ペンダント」。

木製の小さな一輪挿しがペンダントになっているもので、花を挿す部分は水が漏れないような構造になっている。

 

 外から見ると、工房の窓は「そら豆」の形。「そら豆は発芽すると上に伸びていく」ということから、「木の仕事」の成長・発展を願ったものだ。お店と工房そのものも、もともと駐車場だった場所を借り、小林さんと石塚さんがお金を出し合って、自分たちで作ったという。

 

 「木の仕事」のお店と工房について、

小林さんは、「僕が1人でやっている時からそうなんですけど、セルフビルドというか、お客さんと一緒につくるということでやっています。お客さんの家へ行って、一緒にウッドデッキを作ったりしていました。・・・家具も、家の雰囲気やお客さんにあったものをつくりたい。知らない職人さんが作っているんじゃなくて、実際に作っている人や工房が見えた状態でお客さんに提供できるほうが、お客さんがより安心、納得できるんじゃないかなと思っています」と説明する。 

 

障害者が働けるカフェ&ベーカリー「ぷかぷか」をつくりたいと考えていた高崎さんは、

ちょうど1年ほど前、偶然、この「木の仕事」のお店を訪れ、小林さんたちと出会った。

 

高崎さんから「ぷかぷか」の話を聞いて、小林さんは、「それなら、子どもたちと一緒にお店の壁を塗ったりしてはどうだろう?」と提案。

その意見に、高崎さんも「ぜひ、やってみたい」という話になった。

 

 お店の場所も広さも決まっていない段階で、高崎さんからは、「子どもたちに見せたいから、お店の画を描いて欲しい」という依頼も出された。

これを受けて、イメージ画を描いたのは、「木の仕事」の比留間友樹さんだ。

 「画を描いてくれって言われた時には、みんなで作って、夢のある空間がいいということだけだったんで、自由に描かせてもらったんですけど。おとぎ話に出てくるような、そういう空間をつくれたらいいなって思って頭の中にあるものを描いていきました」。

 

小林さんは、「高崎先生から、お母さんたちに、なんとなくのお店のイメージを伝えたいんだといわれた時に、一番考えましたね。僕らの考えが受け入れてもらえるものなのかどうかも分からず・・・。どちらかというと、僕らが『こんな感じのものをやりたい』って言って、それを高崎先生が、『いいね、いいね』と言ってくれて・・・」と振り返る。

 

「ぷかぷか」は、霧が丘グリーンタウンにある空き店舗に入居する。現在、基礎の工事に入ったところだ。イメージ画に描いた「ぷかぷか」を現実のお店にしていく作業が、これから本格的に始まる。

 

「イメージ画より良いねっていわれるようにしたいですね。これから、楽しみながら作れればいいかな。本当に型にはまらないで、やりたいことをやってみようと思っています」と小林さん。

「木の仕事」が携わるお店づくりについては、オープンの日が完成形ではなく、その後も、手を加えていきたいと考えている。

 

 「ぷかぷか」のお店の壁は、働く障害者やスタッフなどみんなで仕上げる計画だ。

あのイメージ画から、どのようなお店が生まれるのか?。

「木の仕事」のメンバーから話を聞いて、「ぷかぷか」のお店を見れる日がますます待ち遠しくなった。

 

「木の仕事」に関する情報は、ID WORKShttp://homepage2.nifty.com/id-works/

「木の仕事、日々のこと」のブログ(http://blog.atoroa.com/

 

知的障害者が働くカフェ&ベーカリー「ぷかぷか」の立ち上げを追いかけている中で、気になっている事がいくつかある。その1つが、「社会起業家」「社会的企業」だ。

 

「社会起業家」「社会的企業」に関する書籍をいくつか読んで整理してみると、「社会起業家」とは、「社会貢献を目的とする事業を起こした人」をいえる。そして、「社会的企業」は、社会貢献を目的とした事業をビジネスとして展開している企業のことを指す。つまり、「社会的企業」は、無償のボランティアや税金で賄われる「福祉」と、営利目的の「企業」の中間に位置づけられる。

 

日本でも、社会起業家は現れている。

事業の目的はさまざまで、子育て支援、地域振興などに取り組んでいる社会的企業の事例が、メディアに取り上げられている。

 

社会的企業のなかには、障害者雇用を事業目的にしている企業もあるはずだ。

私は、「ぷかぷか」の立ち上げを追いかけながら、「ぷかぷか」と同じような理念ですでに事業を展開している社会的企業があれば知りたいと考えていた。

 

 そんな私にとって、興味深いセミナーが開催された。

日本障害者リハビリテーション協会と日英高齢者・障害者ケア開発協力機構主催、英国大使館後援で開催された「国際セミナー 障害者の新しい雇用?インクルーシブな雇用の実現?」(2010年1月31日、会場:全国社会福祉協議会・灘尾ホール)だ。

 

 このセミナーは、社会的企業の1つである「ソーシャルファーム」に焦点を当てていた。

 「ソーシャルファーム」とは、社会的企業のなかでも、特に一般の労働市場では就職が難しい人々(障害者や高齢者、ホームレス、刑務所出所者など)の雇用に焦点をあてている事業体のこと。まさに、私が「知りたい」と思っていた社会的企業の一分野だ。

セミナーでは、海外から演者を招き、英国やドイツの「ソーシャルファーム」を取り巻く状況も紹介しながら、現状や課題について意見が交わされた。

 

 「ぷかぷか」を取り巻いている環境や、事業立ち上げの課題は重なる点が多いと考えられるので、今回は、このセミナーの講演やパネルディスカッションから得た情報を簡単にまとめてみたい。

 

     「ソーシャルファーム」の理念

今、なぜ、「ソーシャルファーム」が必要とされているのだろうか?。

炭谷茂氏(日英高齢者・障害者ケア開発協力機構日本委員会副委員長、ソーシャルファームジャパン理事長)は、基調講演で、「第3の職場=社会的企業が必要です。それがソーシャルファームだと思います」と話した。

 

炭谷氏によると、一般の労働市場では就職が困難な人のための職場として、まず、「第1の職場=税金や福祉制度で維持されている職場」(例えば、授産施設、福祉作業所など)が存在する。しかし、第1の職場は、受け入れられる人数や仕事の種類に限りがあり、工賃も1カ月1万円程度で、働いても自立した生活を営むことができない。

 次に、「第2の職場=民間企業」があるが、法定雇用率を達成できている企業は少ない。日本の法定雇用率は、イギリス、ドイツと比べて低いが、それを達成することもできていない現状がある。つまり、「第1の職場」「第2の職場」だけでは、うまくいかない。

 

 そこで、「第1の職場」の要素である「事業は社会的、公益的な目的を持つ」という点、「第2の職場」の要素である「税金に依存するのではなく、ビジネス的な手法で展開する」という点を取り入れたハイブリッド型の「第3の職場=社会的企業」が求められているという。

 炭谷氏が理事長をしている「ソーシャルファームジャパン」では、日本で「ソーシャルファーム」を2000社つくることを目指し、さまざまな活動を展開しているそうだ。

 

上野容子氏(東京家政大学文学部福祉学科学科長・教授)は、パネルディスカッションのなかで、障害者の就労について、「これまでは先に訓練ありきで進んできた」と指摘した。

障害者の一般企業への就労についても、障害者が企業のやり方にあわせる部分があったという。

障害者に訓練させたり、企業の仕事にあわせることを求めるのではなく、障害者自身が「これをしたい」というものを仕事にしていくこと。それが「ソーシャルファーム」のあり方だと説明した。

 

 「ソーシャルファーム」は、障害者にとって、より働きやすく、やりがいや生きがいを持てる職場になる可能性を持っていると思う。その考え方は、高崎さんの「ぷかぷか」が目指しているものに重なり、「ぷかぷか」が実現すれば「ソーシャルファーム」といえるだろう。

 

     どのように立ち上げ、どう展開していくか?‐?リスクを軽減するために

「ソーシャルファーム」の理念は、新たな障害者就労の道をつくる可能性を感じさせる。

しかし、「ソーシャルファーム」にも課題はある。

 会場にいた参加者からは、「就労支援A型事業所を立ち上げ、精神障害者がお菓子を製造・販売する事業を展開しているが、私財を投げうってやっている。この事業に取り組むことを人に勧めることはとてもできない。もっと国の支援が必要だと考えている。個人の犠牲を伴う福祉は成り立たないと思う」という声があがった。切実さが伝わる声だった。

一方で、同じように私財を投じて事業を立ち上げている参加者から、「民間企業がビジネスをするのと同じように、リスクは引き受けなくてはならないと思う。売れる商品をつくること。商品のブランディングやマーケティングをもっとやらなくてはいけない」という声もあった。

 

「ソーシャルファーム」を立ち上げようとしている人は、「問題を抱えている人と一緒に仕事をしよう」という思いがある人だが、資金が十分にある人は、少ない。たいていは、私財を投げ打って取り組んでいるようだ。事業は立ち上げが難しい。立ち上げ時のリスクを少しでも低くすることが求められている。

 

 演者や会場からは、事業を成功させるためのヒントも、いくつか出された。

次のようなことを考える必要があるという指摘だ。

 

     どのような市場でビジネスをするか?。つまり、どのような商品を、どの程度の収益率で、どの程度の量を販売すれば事業が成り立つのか?を考える。マーケティングや市場調査が必要。

     価格の設定をきちんとすること(これが難しい)

     多品種、少量、ニッチを目指すことが必要。(イギリスでは、「1つの籠にたくさんの卵を載せることはやめたほうがいい」と言う。1つの大きなことに賭けると、リスクが大きくなる)

     他にはないアイデアは、ビジネスになる

     事業は、小さな部門で起こすこと

     消費者を用意すること。(消費者を事業のサポーターとしてつかまえ、確保しておく)

     地域の住民も参加するかたちをつくる

 

これらは、ビジネスを展開するうえで、基本的な要素といえるかもしれないが、こうした要素をきちんと詰めていけることが、リスクを軽減し、成功を導くための鍵なのだろう。

 

     今後の課題

最後に、日本における「ソーシャルファーム」の発展について考えてみたい。

 

 ドイツでは「ソーシャル・ファーム法」という法律ができており、「ソーシャルファーム」を立ち上げる時、そして立ち上げから3年間は、政府による手厚い支援がある。

投資の補助金・貸付金(職場1件:2万5000ユーロ)、ビジネスコンサルティングを受けるための補助金(新規の場合4500ユーロなど)のほか、非営利企業は消費税を19%→7%に減額など、ヨーロッパ諸国のなかでも支援が充実している。(ゲーロルド・シュワルツ氏/国連ミレニアム開発目標達成のための基金とセリビア政府による共同プログラムコーディネーターによる講演より)

 

 ただし、ドイツでも、突然、このような支援制度ができたわけではない。「ソーシャルファーム」がぐんと増えてきたのは、2000年以降だ。

ドイツでは、「ソーシャルファーム」の存在価値を示す調査研究を行ない、ロビー活動などを通して支援制度を獲得してきた経緯がある。

障害者が働き、税金を支払うことができれば、政府が「ソーシャルファーム」の立ち上げに投資した分は還ってくる。このことを具体的に示したことが、「ソーシャルファーム」への支援制度をつくる説得材料になったようだ。

 

 経営の経験がない一個人が、事業を起こし、それを軌道に乗せるのは容易なことではない。「ぷかぷか」の立ち上げに奮闘している高崎さんと接していても、事業を起こすことの大変さを感じる場面がたくさんある。

 

ドイツと同程度の支援制度をつくることは、すぐには難しいだろう。しかし、「障害者が働く場をつくりたい」という思いを抱く個人を、何か、もう少しサポートする仕組みをつくることはできないのだろうか?。

「ソーシャルファーム」のこれまでの成功事例や失敗事例から学んだり、事業立ち上げに関するノウハウを細かく知ることができたり、起業家同士が情報交換したり、協力しあえるような場が、もっとできないか?。

 全国各地で芽吹きつつある日本版「ソーシャルファーム」の情報を積み重ねて、「ソーシャルファーム」の存在価値を、社会全体に向けて示すことも必要だと感じている。

 

 

 

   カフェ&ベーカリー「ぷかぷか」の開店に向けた準備として、高崎さんは、月1回、パン教室を開いている。会場は、横浜市の中山地区センター(ハーモニーみどり)の調理室。1月24日に開催したパン教室は、第17回を数えた。

この日の参加者は、障害者6人(高校生も含む)や保護者、「ぷかぷか」で働く予定のスタッフなど約25人が集まった。

 

 今回のメニューは、カレーパン、焼きアンパン、鍋焼きパン。カレーパンはこれまで焼きカレーパンを作っていたが、はじめて、揚げたカレーパンに挑戦した。

高崎さんが、あるパン屋さんで聞いてきたところ、「焼き」よりも「揚げ」のカレーパンのほうが売れるらしい。お客さんの年齢層にもよるが、男性のお客さんは「揚げ」のカレーパンを好む傾向があるようだ。

 

パンづくりは、傍らから眺めているだけでも、とても楽しい。

生地を混ぜたり、こねたり、形をつくっていく作業そのものが楽しいし、「これが美味しいパンになるんだ」とワクワクした気持ちを膨らませながら進めることができる。

 生地が発酵したり、オーブンの中で膨らんでいく過程も見ていて飽きない。

焼きあがった時の香ばしいかおりはなんともいえないし、オーブンを開けて焼きあがりを見る時の感動もある。

 

「ぷかぷか」準備のパン教室でつくるカレーパンは、まず、カレーの具となる野菜を細かく切り、炒めてカレー味をつける。出来上がったカレーのあんは、冷ましてから、パン1個に入れる分量ごとに丸くまとめる。パン生地をつくり、1個分ごとに分割。こんどは、カレーパン1個分の生地を伸ばして、カレーのあんを1つずつ包み、水にくぐらせてからパン粉の衣をつけて揚げる。

 

 簡単にまとめてしまったが、パンの中身になるカレーあんは味の調整が難しい。

材料や作り方によって、やや水分が多かったり、味にパンチがなかったりする。

カレーパンやアンパンなど、中身が入ったパンの場合、パン生地にあんを入れた後にきちんと閉じていないと焼いたり、揚げたりした時に、あんが生地からはみ出してしまう。

 

自宅で手作りして楽しむパンであれば、多少見栄えが悪くても問題はない。むしろ、形や出来栄えがふぞろいなことも、それぞれの家庭の「味」になるだろう。

 

しかし、「ぷかぷか」では、パンを「商品」として、お客さんにお金を出して買っていただかなくてはならない。カレーがはみだしたカレーパンを店頭に並べるわけにはいかない。

 

この日のパン教室の途中、高崎さんは、「ぷかぷか」でスタッフとして働く予定の参加者に向けて、「みんなで稼がないといけないんですよ」という話した。

これまでに何回かパン教室に足を運んできたが、パンづくりの練習や修行というよりも、「みんなで楽しくパンをつくる」という雰囲気で占められていた。この日のパン教室の様子をみても、参加したみんなでバタバタしながら、パンを作っている。あくまで趣味レベルのパンづくりだと思う。スタッフの役割分担が整理されているとはいえないし、パンづくりの作業が効率的に進められているともいえない状態だ。

 

高崎さんの口から「働いて稼ぐ」という話が出てきたのは、いよいよ開店の時期が迫っており、高崎さんの中で、「商品をつくる」「稼ぐ」という課題について、「なんとかしなければいけない」という思いが強くなってきたからなのかもしれない。

 

 障害のある人も、ない人も、パンづくりのような楽しい作業を一緒にできたら、「今日は楽しかったね」という思いを共有できると思う。楽しみながら作りあげたものを、お客さんに喜んで買ってもらうことができたら、さらに嬉しいだろう。お金もいただくことができたら、自分たちの作ったものに自信が持てるし、「明日も頑張ろう」と思える。

 

 しかし、「商品」のパンを作るには、一定の品質が求められる。他のお店のパンと、味や価格の競争にさらされる。収益を上げるために売り上げの目標があれば、それに見合う数を製造したり、販売できなければならない。効率性や生産性を求められる部分が、どうしてもでてくる。

 

「ぷかぷか」で働く予定の障害者の中には、野菜を切る、お皿を洗うなどの作業をある程度こなせる人もいるが、パンをつくる過程で「これを、こうしてください」とお願いしても、そのとおりにすることができず、パン生地とあんがグチャグチャになってしまう人もいる。

そういう人も受け入れながら、一定の量や質の商品をつくり、それを販売して収益をあげなくてはならない。さまざまな課題を同時進行的にクリアしていかなければ、経営を維持していけない。それはあまりに荒業のような気がして、私は、想像するだけで息が詰まりそうな気持ちになる。

 

「カフェ&ベーカリーぷかぷか」は、立ち上げ、存続していく、道すじをきちんとつけていけるのだろうか?

一言で言えば「福祉と経営の両立」だが、これは一筋縄ではいかない、とても難しいテーマだと考えている。

プロフィール

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  • 由香里
  • 出版社勤務の会社員ですが、障害者に関連するテーマで取材し、市民メディアOurPlanetTVのWebサイトなどで発信しています。障害者の就労について関心があり、働く場が広がっていくような情報発信をしていきたいと考えています。
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